障害者の便利帳

障害者による障害者のための情報ウェブマガジン

昔の恩師が進路だよりに書いてくれた文章

担任の先生ではありませんでしたが、中学1年の頃、校内でのトイレ介助をしてくれたり、
その後、体調を崩したときなど、メールで数学のアドバイス等を頂いたりしていた先生がいました。

その先生から、去年末(2011年・冬)にメールが来ました。

久しぶりすぎて、正直、思い出すのに時間がかかりました。(すみません。。。)

進路だよりに僕のことを載せたい旨でした。
時間が経ちまして、許可も得ましたので、ここにその文章を転載しておきます。

とても良く書いてあるので、実際の春田さんとは少し違うかもしれませんが…。

尚、書いてある情報は2011年当時のものです。

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社会的・職業的自立に向けて
       教頭 犬飼和夫
 「トライやる・ウィーク」というものをご存じでしょうか。これは兵庫県で行われているもので、中学2年生が地域で職場体験、福祉体験活動などを行い、働くことの意義、楽しさを実感したり、社会の一員としての自覚を高めるようにする取組です。今ではほとんどの学校でこのような就業体験活動はおこなわれるようになっていますが、平成10年度に兵庫県で始められた当時は先進的な取組であり、しかも2週間という長さでしたので、大変注目を集めていたものでした
 愛知県では「自らを高めること」と「社会に役立つこと」を基本的視点とした「あいちの人間像」の実現に向けて「あいちの教育に関するアクションプラン」を策定し平成19年度から取り組んできました。現在は平成23年度からの「アクションプランⅡ」を策定し、目標達成に向けてさまざまな取組が行われているところです。
 その重点目標の一つが「発達段階に応じたキャリア教育を充実します。」というものです。
 本校においては、生徒の働くことへの意識を向上させ、職業観、勤労観を育てるため、今年度は就労の準備体験として「ぷれジョブ」を中学部3年で、企業等との連携協力によって「長期間現場実習」を高等部において実施してきました。
 平成26年には愛知県で技能五輪全国大会・アビリンピック全国大会が行われることになっています。先月11月始めにはそれに向けて、技能について県民の皆さんに広く知っていただく「あいち技能プラザ2011」が開催されました。そこでは名古屋盲学校の理療科の生徒による「癒しのマッサージ」が行われました。企業関係者にも盲学校での理療教育を理解していただき、就労へとつなげていきたいと考えています。
少し前ですが、平成19年に文部科学省等との協議のうえ、厚生労働省から「視覚障害者に対する的確な雇用支援の実施について」という通知が出されています。これには視覚障害者の職域の現状、視覚障害者の職業能力開発の状況、就労支援に係る情報等が示され、各都道府県担当者へ視覚障害者の的確な支援をするよう指示しています。
 それまでは視覚障害者の雇用支援についての具体的な指示が国としてほとんどされてこなかったことを思えば、この通知は行政関係機関の理解を深めるためには画期的なものであったと思います。
 このように見てみると、キャリア教育の充実にともなう就業体験活動や視覚障害者の雇用を取り巻く状況など、少しずつではありますが改善されてきているように思われます。
さて、ヘレンケラーの言葉に次のようなものがあります。
While they were saying among themselves it cannot be done, it was done.(できるはずがない、と言い合っているうちに物事は成し遂げられている。)
 この言葉を強く思ったのは、最近になって私が以前の学校でかかわった生徒の卒業後を知ったときでした。
 彼が中学部に入学してきたときは、肢体不自由で車いすを使っていました。上肢も不自由でしたが指先は動かせましたので電動車いすを使っていました。在学中に体調が悪くなり、入退院を繰り返していました。そして気管切開をして人工呼吸器を使うようになりました。そのため医療的ケアが必要でたんの吸引を行うようになりました。
 彼が自宅で訪問教育を受けるようになってからは、直接かかわることがなくなりましたが、メールで数学の質問に答えたりすることがありました。
それだけ重度の障害でしたので、生きることがまず大切だと誰もが思っていました。中学部の頃は進学や就業については誰も具体的なことは考えることができない状況だったと思います。
 最近、インターネットで調べものをしていたところ、十数年ぶりに偶然彼のホームページを発見したのです。
現在の彼の状況は、電動車いすを使い、気管切開をして、夜間から午前中、疲れたときなどは、人工呼吸器を着けています。必要に応じて酸素吸入をしています。この状態は、私が知っている以前と大きく変わっていませんでした。しかし、そのほかは全く予想外でした。彼は養護学校を卒業後、大学に進学し立派に卒業して、現在は在宅勤務で仕事をしていたのです。
 私ができるはずがないと思っているうちに、彼はやり遂げていたのです。
彼のホームページの中で、在宅勤務をするようになった経緯が紹介されていますが、その中の彼の言葉に次のようなものがあります。
 「自分で考えて自分なりの道を進むしかない」
 私ができるはずがないと思っているうちに、彼の強い決意と行動力で自分の道を切り開いていったのでした。
 視覚障害者に関して周囲の状況は少しずつ改善されているにしても、自分なりの道を進むことができるよう、努力していくことが大切であることを思いましたし、学校としても一人一人の可能性を信じて、できるはずがないという先入観を持たないようにしなければならないと教えられました。
 最後に、彼から承諾をいただきましたので紹介させていただきます。名前は春田康吏(はるたやすし)さん。ホームページアドレスは http://harutayasushi.net/ です。名前で検索してもすぐにわかると思います。ぜひ彼の活躍ぶりを御覧ください。

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